| コラム 「食品開発×SDGs」 | ||
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| (4) ヨーロッパを巡って見えた日本のサスティナブルの原点とこれから | ||
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ヨーロッパを巡って見えた日本のサスティナブルの原点とこれから
皆さま、こんにちは。株式会社Agritureの小島です。これまで第1回〜第3回のコラムでは、サスティナブルな食品開発のあり方や、日本における課題・可能性について考えてきました。
今回は少し踏み込んで、実際に現地で見て感じた“サスティナブルの今”を共有したいと思います。2025年4月にヨーロッパ8カ国を巡り、10月にはアメリカを訪問する機会があり、現地のスーパーやレストラン、農家、展示会などを通じて、言葉では語りきれない「文化としてのサスティナブル」を肌で感じました。
今回は、その中でも特に印象に残ったヨーロッパの事例を取り上げながら、日本との違いについても考えてみたいと思います。
ヨーロッパはサスティナブルの本場?
日本では、コロナ禍をきっかけに「SDGs」や「サスティナブル」という言葉が一気に広まりました。企業や自治体の取り組みも増え、フードロス削減やプラスチック削減、再生素材の利用などが進んでいます。ただ、どこか努力して取り組むものという印象が残り、まだ生活の中に自然に溶け込んでいるとは言い難いかもしれません。
一方ヨーロッパでは、サスティナブルはもはや意識的な行動ではなく、生活の前提として存在しています。スーパーに並ぶ野菜や果物は形が不揃いでも当然のように受け入れられ、人々はその「自然さ」を楽しんでいます。フランスでは規格外の野菜を使ったスープやスナックが一般的に流通し、オランダでは環境制御型農業が当たり前のように導入されています。彼らにとってのサスティナブルとは、何かを我慢することではなく、自分たちの暮らしをより心地よくすること。そうした考え方が、社会全体の仕組みや教育、購買行動にまで浸透しているのを感じました。
観光文化に見る価値観の違い
以前、京都の街を歩いていて気づいたことがあります。アジアからの観光客は主に都市部での買い物や飲食を楽しみ、欧米からの旅行者は郊外や山間部でハイキングやサイクリングなど、自然の中で過ごす時間を大切にしているということです。
同じ観光でも、その目的や過ごし方には明確な違いがあります。アジアの旅行者は文化や食を味わうことを楽しみ、欧米の人々は自然の中で心を整える時間を求めているように見えます。その根底には、自然との距離感に対する文化的な違いがあるのだと思います。
欧米の人々にとって自然は、非日常を味わう場所ではなく、生活の延長線上にある存在です。週末に森を歩き、湖畔で家族と時間を過ごす。そんな過ごし方が彼らの暮らしに深く根づいており、自然と共にあることが“リフレッシュ”ではなく“当たり前”になっています。
一方で、日本を含むアジアの多くの都市では、便利さや効率性を優先し、自然を日常生活から切り離してしまう傾向があります。その違いこそ、サスティナブルという考え方がどれほど生活文化の中に根づいているかを示しているように思います。
日本なりのサスティナブル
しかし、日本にもサスティナブルの本質に通じる価値観が、古くから息づいています。その代表が「もったいない」という精神です。これは単なる節約ではなく、自然や食材への敬意を表す言葉。野菜の皮も魚の骨も無駄にせず、干す・漬ける・煮るなどの工夫で最後まで使い切るという知恵は、現代で言うフードロス削減と同じ考え方です。日本人は四季の移ろいを感じ取り、旬を大切にし、自然と共に生きる文化を持っています。過剰に消費するよりも調和を重んじる姿勢は、まさにサスティナブルの根幹にある思想です。
また、日本の特徴は「誰が、どのような思いで作ったか」というストーリーを重視する点にあります。ヨーロッパが制度や認証を基準に持続可能性を判断するのに対し、日本では“人”の手や想いを通して信頼を育てます。顔の見える生産者や地域の手仕事、職人の技が評価されるのは、その背景にある努力や感性に共感する文化があるからです。竹細工や和紙、漆器など、素材の命を最後まで生かそうとする発想もまた「無駄をなくす」ではなく「命を活かす」考え方の表れです。つまり、日本のサスティナブルは効率ではなく、敬意に支えられています。
これからの、サスティナブル
日本なりのサスティナブルとは、単に環境に優しい製品を作ることではなく、自然や人との調和を重んじる“生き方”に近いものだと思います。古くから日本には、素材を最後まで使い切る「勿体無い」の精神や、四季の恵みを尊ぶ文化が根づいています。干す、漬ける、発酵させるといった技術も、限られた資源を無駄なく活かす知恵でした。
これらの伝統的な価値観を、現代の食品開発にどう生かすかが問われています。大量生産や効率を追うのではなく、地域や季節ごとの個性を未来へつなぐ発想。自然、技術、伝統、美意識が共鳴するところにこそ、日本らしい持続可能性の形があります。日本の食づくりは、再びこの原点に立ち返ることで、世界に通じるサスティナブルの姿を示せるのではないでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
株式会社Agriture HP : https://agriture.jp/
Agritureの取り組むサスティナビリティについて : https://agriture.jp/sustainable/
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