皆さん、こんにちは。リライズコンサルティングの南口です。

　本日も前回に引き続き、「EC事業でうまくいかない食品企業のよくある失敗１０例」についてお伝えします。

　本テーマが初めての方は是非、以下に挙げる「ＥＣ事業でうまくいかない食品企業のよくある失敗１０例」をご覧いただき、自社に当てはまらないかチェックしてみてください。

　（前回のレポートをご覧の方は、飛ばしてお読みください）

　「EC事業でうまくいかない食品企業のよくある失敗１０例」

�@経営者が本気になっていない

�A自動販売機と勘違いしている（いきなりＨＰ制作会社に依頼）

�BＥＣのビジネスモデルを理解できていない

�C販促投資が行えてない、後投資型事業であることへの理解不足

�D現場からの反発（営業組織から、事務スタッフから）

�E責任者がいない、施策がやり切れていない

�F自社で購入する理由が明確でない

�G新規顧客が集まらない

�Hリピート作りが出来ていない

�I構造上、収益を生まない

　今回は、�BＥＣのビジネスモデルを理解できていない、についてご説明します。

少し極端な表現になりますが、ＥＣ事業は「名簿ビジネス」です。名簿ビジネスと言っても怪しげな事業者から名簿を購入するというわけではありません。自社で購入してもらうことで個人の住所やメールアドレスを獲得します。その得られた名簿へ様々な提案を行うことで、２回目、３回目の購入を促し売上を積み上げていくビジネスモデルです。食品ＥＣ（ＢｔｏＣ）ですと、概ね1名あたり年間８，０００円〜１０，０００円の売上になり、ＢｔｏＢだと商材や業態にもよるため幅がありますが、取引店舗１軒あたり年間３０万円〜１００万円です。つまり名簿の数と売上は相関関係にあるため、売上をスケールアップしていくためには、名簿の数を増やしていくことが必須となります。

またＥＣのビジネスモデルを理解する上で、必ず覚えておくべき２つのキーワードがあります。「ＣＰＯ（シー・ピー・オー）」「ＬＴＶ（エル・ティー・ヴイ）」です。

ＣＰＯ：新規顧客名簿獲得コスト

ＬＴＶ：顧客生涯価値

ＣＰＯは、「販促費÷得られた新規顧客名簿数」で算出され、ＬＴＶは（具体的には異なりますが）「顧客１名あたりの粗利益の累計額」で算出します。ＣＰＯとＬＴＶの関係は上記の図のようになります。

「ＣＰＯ　＜　ＬＴＶ」になれば、いつの時期か収益化できることは理解いただけると思います。ただ初回取引でＣＰＯを回収することはできず、リピートを積み上げ販促コストを回収していくのがＥＣビジネスです。ですが、初回の取引だけで費用対効果を評価してしまい、販促予算が縮小し、「名簿数」が増加せず、いつまでたっても事業がスケールアップしていない事業者が多く見られます。業界全体としては、前年１１０％前後で市場拡大しているため、EC事業は伸びていて『当たり前』で、前年比１１０％未満の成長率であれば平均以下という評価となります。

ＥＣ事業を構築するためには、自社が目指す売上を達成するために、そもそもどれだけの名簿数が必要なのかを設定する必要があります。ＢｔｏＣの場合、年商１億円を目指す場合は、ざっと１万人の名簿が必要となります。その目標名簿数を獲得するために、自社・競合・市場を見て、自社の戦略戦術を組み立てます。仮に飲食店を運営するのであれば、目標売上から予想客単価で割って、目標客数（組数）を算出しますが、ＥＣビジネスは売上の構造が見えにくいためか、やみくもに事業を開始する方が非常に多く見られます。

　よくＷＥＢ検索をするとＳＥＯやリスティング広告、ＳＮＳなど集客テクニックばかりの情報があふれています。もちろん理解し知識としては必要ですが、実際に自社が名簿を獲得していく上での手法論でしかなく、扱う商材や自社のリソース、競合環境によって優先度や重要度は変わります。

お伝えさせていただいたＥＣのビジネスモデルについて教えてくれる記事は中々無いのですが、やはり伸びているＥＣ事業者はここを押さえています。

　前回のレポートでもお伝えした通り、ＥＣ事業は、ＥＣサイトを作れば事業としては開始できるという参入障壁の低さは魅力ですが、ビジネスモデルの不理解が、成長期市場にも関わらず、いつまでたっても売上がスケールアップしない最大の要因になっています。

　ＥＣ事業で伸び悩んでいる方は、ぜひ「失敗例」に陥っていないかご確認ください。